外来化学療法科
1)診療科の紹介
化学療法は最近のがん診療の中で最も目覚しい進歩を遂げている分野のひとつです。分子標的製剤をはじめとした優れた薬剤が数多く開発され、さらにそれらを用いた大規模な臨床試験は、数年前には想像もできなかった良好な治療成績を生み出しました。同時に支持療法の進歩や医療制度の変遷に伴い、化学療法は急速に入院から外来にシフトしています。
当センターでは2000年に19床からなる通院化学療法室を増築して以来、連日多数のがん種を対象に外来化学療法を行っています。治療件数は年々増加しており、2007年度には年間1万件を優に超えました(図1)。これは全国的に見てもトップレベルの規模であり、これに対応するため2007年度には25床、そして2008度は35床にベッド数を増床しました。対象疾患は多岐にわたりますが、乳がんと消化器がんが多いのが特徴です(図2)。
質の高い化学療法は、職種の枠を越えたチーム医療に上に成り立つものです。増加し続ける外来治療を安全かつ効率的に行う仕組みを整え、さらに副作用・合併症を最小限に抑えられるよう、多職種のスタッフが一丸となって努力を続けています。患者さんに安心して治療を受けていただくために、以下のような取り組みを行っています。


治療プロトコールの整備と電子カルテの活用
各診療科から提出されたプロトコールは、まずオンコロジーチームという医師、看護師、薬剤師で構成される専門委員会で審査されます。ここで承認されたものだけが登録され、実施可能になります。前投薬や輸液量・速度など、具体的な投与方法もこのチームで決定する中央管理方式を取っているため、安全管理や副作用対策なども容易に行うことができます。ここで威力を発揮するのが電子カルテです。化学療法専用アプリケーションの開発に関わることにより、誤った投与量やスケジュールで治療が行えない仕組みを構築しました。また、常に最新の患者情報を得られる電子カルテの特性を活かし、様々なレベルでのチェック体制を整えました。誤投薬を防ぐためには、バーコードによる患者認証と薬剤管理を徹底しています。
副作用マネージメント
残念ながら、がん化学療法には一定の確率で副作用が出現します。そのため、高い治療効果が得られていても治療を断念せざるを得なかったり、あるいはQOLが著しく損なわれることがあります。
当センターではこれら副作用を主治医任せにするのではなく、病院全体の問題と考え対応しています。その方法を要約すると以下の通りです。
1)副作用の実態を看護師が把握しデータ収集する。
2)薬剤情報を薬剤師が整理する。
3)オンコロジーチームで対応法を検討する。
4)電子カルテのレジメンマスタを修正する。
5)副作用対策を盛り込んだレジメンで一斉に治療が行われる。
このような努力の結果、mFOLFOX6療法による過敏症(18.0→4.5%)、
ビノレルビン、エピルビシンによる静脈炎(5.1→0.8%、75.0→0%)、
EC・FEC療法の嘔気緩和など、多岐にわたる副作用の改善に成功しました(図3)。
新規抗がん剤の導入
近年、新規抗がん剤が次々と開発され承認されています。当院ではこれらをいち早く取り入れていますが、特に分子標的薬の場合、従来の抗がん剤では経験しなかった副作用がしばしば出現します。その中には致死的となる危険なものも含まれており、十分な準備ときめの細かい管理が必要です。私たちはこれら新規治療に即座に対応できる水準を維持する責務を感じており、適切な投与法や支持療法を絶え間なく研究しています。
今後の課題
今後も分子標的薬をはじめとした新規抗がん剤が今後も次々と開発されますが、これら新規治療に即座に対応できる水準を維持し、多くの患者さんの期待に応えていく必要があると考えています。また、治療件数はますます増えていくことが予想されます。一施設の許容量には限界があることから、がん診療の均てん化を進めて他院との連携を強化することが重要であると考えています。
2)昨年度の外来化学療法の実績
≪年度別外来化学療法件数≫
| 年度 | 件数 |
|---|---|
| 平成16年度 | 5790件 |
| 平成17年度 | 7755件 |
| 平成18年度 | 8771件 |
| 平成19年度 | 11537件 |
| 平成20年度 | 13346件 |
| 平成21年度 | 14960件 |
*平成20年度より集計法をそれまでの
レジメン数から治療件数に変更しました。
≪平成21年度の疾患別治療件数≫
| 疾患 | 件数 |
|---|---|
| 胃がん | 1618件 |
| 大腸がん | 2331件 |
| 膵臓・胆道がん | 2325件 |
| 食道がん | 141件 |
| 乳がん | 4641件 |
| 悪性リンパ腫 | 1187件 |
| 多発性骨髄腫 | 301件 |
| 肺がん | 619件 |
| 卵巣・子宮がん | 1000件 |
| 膀胱・前立腺がん | 318件 |
| 脳腫瘍 | 70件 |
| その他 | 407件 |
| 合計 | 14960件 |
3)構成メンバー
外来化学療法科部長
辻村 秀樹(つじむら ひでき)
H3年 岐阜大学医学部卒
専門は造血器腫瘍 がん化学療法全般
- 日本内科学会 認定内科医・指導医
- 日本血液学会 血液専門医・指導医
- 日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医
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