千葉県がんセンター泌尿器科における地域連携クリティカル・パスのご紹介
千葉県がんセンター泌尿器科では、近隣の泌尿器科開業医師と「千葉泌尿器科地域連携協議会」を設立し、平成19年11月より、前立腺癌を中心とした地域連携クリティカル・パスによる地域連携を開始しました。参加施設は、21医療機関に上っております。現在のパスですが、1)前立腺生検後の前立腺癌陰性患者におけるPSA経過観察パス、2)前立腺全摘除術のPSA経過観察パス、3)前立腺癌に対する内分泌療法パス、4)表在性膀胱癌の治療後経過観察パス、5)膀胱癌に対するBCG膀胱注入療法の治療パス、6)前立腺癌に対する3次元原体照射(3D-CRT)を行なっています。
| パスの名称 | 対象患者 | 適応開始条件 | アウトカムの設定 | バリアンス発生時 |
|---|---|---|---|---|
| 泌尿器科/前立腺癌/PSA経過観察 | PSA高値/生検陰性 | PSA値 |
PSA定期検査:生検時の1.4倍未満を確認 | 前回の生検時のPSA1.4倍以上⇒パス運用開始施設へ再紹介 |
| 泌尿器科/前立腺癌/前立腺全摘後 | 限局性前立腺癌/前立腺全摘除術後 | PSA |
PSA定期検査:PSA |
PSA |
| 泌尿器科/前立腺癌/内分泌療法 | 前立腺癌/内分泌療法 | PSA |
PSA定期検査:PSA |
PSA |
| 放治科・泌尿器科/前立腺癌/放射線治療後経過観察 | 前立腺癌/放射線治療後 | PSA |
PSA定期検査:PSA |
PSA |
| 泌尿器科/膀胱癌/TURBt後BCG膀胱内注入療法 | 膀胱癌/TURBt後 | 病理所見(pT1以下またはpTis以下かつG3以下)、上部尿路に異常なし | BCG治療8回 | 完遂または途中中止⇒パス運用開始施設へ再紹介 |
| 泌尿器科/膀胱癌/TURBt後経過観察 | 膀胱癌/TURBt後 | 病理所見(pT1以下かつG2以下)、上部尿路に異常なし | 膀胱鏡、尿細胞診で異常なし | 再発または異常所見⇒パス運用開始施設へ再紹介 |
それぞれのパスの対象患者、適応開始条件、アウトカムの設定、バリアンス発生時の対応は表1の通りです。パスの運用方法は、担当医師がパスの適応と認めた場合、患者へ説明し同意を得ます。同意を得た患者に対して、担当医師が1) 地域連携医への診療情報提供書、2) 患者用パス、3) 地域連携医用パス、4) 採血・処方・PSA値を記載可能な患者の場合のみ患者手帳の配布、5) 病理検査結果コピー、6) 採血検査データのコピー、7) 地域連携室への登録票を作成し、1)-6)をセットにして患者へ直接手渡します。パスの例として「前立腺全摘術後」「PSA経過観察」「内分泌療法」を例示しました。
(医療機関用)
(患者用)
もし、バリアンスが発生し、当センターへの受診が必要な場合、地域連携医が当センターの地域連携室へ連絡することで泌尿器科への受診が予約されます。患者の登録管理ですが地域連携室において登録票により行なっており、地域連携医へ紹介例やバリアンス例によって当センターへ再紹介された患者をすべて管理しております。
表2は平成22年6月末現在におけるパスの登録状況です。6つのパスで1006件に上っております。
地域連携のメリットについては、病診連携を進める千葉県がんセンター泌尿器科としてのメリット、病診連携先の医療機関(通常は医院)のメリット、そしてなによりも患者のメリットが成立することが重要です。千葉県がんセンター泌尿器科で病診連携を進める最大のメリットは、紹介患者とくに手術適応の患者や進行病期・再発期患者への診療に十分な時間をとることができます。また、外来担当医師を減らすことで医師の労力を手術へ割り当てることができ、手術中心の急性期病院として医療の役割分担を明確にすることができます。病診連携先の医療機関のメリットとしては、がん患者であれば経過観察中に再発の危険性があり、対応が遅れると医院としての信頼が損なわれることが問題ですが、パスによりそのリスクの軽減が図れることにあります。また、紹介患者を確実に再紹介してもらうことで医院収益を見込めることです。また、患者側のメリットとして、パスにより自分の病状の理解が可能であり、高次機能の医療レベルが保障されるということやもし再発などの問題があってもすぐ病診連携先の医療機関から千葉県がんセンターへ優先的に再紹介される安心感につながると思われます。
また、千葉泌尿器科地域連携協議会が主体となって年2回、パスの検討や新規開発、地域連携を進めている他の医療機関の講師を招いて勉強会も行なっています。
《千葉泌尿器科地域連携協議会》
参加施設は平成22年3月末現在
| 1 | 千葉大学大学院 | 千葉市 | 23 | 千葉健康クリニック | 千葉市 |
| 2 | 津田沼病院 | 習志野市 | 24 | おおあみ泌尿器科 | 山武郡 |
| 3 | 千葉県がんセンター | 千葉市 | 25 | 原村医院 | 市原市 |
| 4 | 千葉市立青葉病院 | 千葉市 | 26 | ポートスクエア柏戸クリニック | 千葉市 |
| 5 | さかい泌尿器科医院 | 茂原市 | 27 | とおやま医院 | 千葉市 |
| 6 | 座間泌尿器科医院 | 東金市 | 28 | つじ泌尿器科クリニック | 館山市 |
| 7 | 西川泌尿器科クリニック | 千葉市 | 29 | 津谷クリニック | 長生郡 |
| 8 | 宮内泌尿器科医院 | 千葉市 | 30 | 佐原病院 | 香取市 |
| 9 | みどり泌尿器科皮フ科医院 | 千葉市 | 31 | 玄々堂君津病院 | 君津市 |
| 10 | 倉持泌尿器科クリニック | 市原市 | 32 | 千葉南病院 | 千葉市 |
| 11 | あきもと泌尿器科クリニック | 八千代市 | 33 | 長山クリニック | 八千代市 |
| 12 | そめいのクリニック | 佐倉市 | 34 | ぴあーすクリニック | 千葉市 |
| 13 | 佐原泌尿器科クリニック | 香取市 | 35 | 藤井クリニック | 千葉市 |
| 14 | 山王病院 | 千葉市 | 36 | 藤田クリニック | 船橋市 |
| 15 | 津田沼中央総合病院 | 習志野市 | 37 | 大和クリニック | 木更津市 |
| 16 | 千葉東病院 | 千葉市 | 38 | 塩田医院 | 勝浦市 |
| 17 | カヤマ内科泌尿器科 | 千葉市 | 39 | みはま医院 | 千葉市 |
| 18 | いすみ医療センター | いすみ市 | 40 | みどりヶ丘診療所 | 市原市 |
| 19 | 花見川中央クリニック | 千葉市 | 41 | 真鍋病院 | 成田市 |
| 20 | クリニック五井 | 市原市 | 42 | 千城台クリニック | 千葉市 |
| 21 | 篠クリニック | 千葉市 | 43 | ゆうきクリニック | 旭市 |
| 22 | 八街総合病院 | 八街市 | 44 | わたべクリニック | 木更津市 |
《学会発表》
- 丹内智美, 竹中敦子, 益満陽子, 丸岡正幸, 浜野公明, 植田 健, 岡野達弥 前立腺がん地域連携パス導入の取り組み 第10回日本医療マネジメント学会学術総会 平成20年6月20日 名古屋市 口演
- 植田 健、佐塚智和、五十嵐杏子、今村有佑、深沢 賢、巣山貴仁、江越賢一、浜野公明、市川智彦、丸岡正幸 千葉県がんセンターにおける地域連携とクリティカル・パス 第46回日本癌治療学会総会 平成20年10月30日 名古屋 口演
- 丹内智美,浜野公明,高瀬峰子,植田 健 泌尿器科領域がんの地域連携クリティカルパスにおけるバリアンス分析 第11回日本医療マネジメント学会学術総会(口演) 平成21年6月20日 長崎
- 浜野公明,丹内智美,植田健,高瀬峰子:医療機関意識調査による地域連携クリティカルパスの効果についての検証.第11回日本医療マネジメント学会学術総会.2009年6月20日.長崎(口演)
- 植田 健,浜野公明,丹内智美,高瀬峰子,佐塚智和,宮坂杏子,今村有佑,小丸 淳,深沢 賢,江越 賢一,丸岡正幸 泌尿器がんの地域連携クリティカルパス運用とその問題点 第47回日本癌治療学会総会 平成21年10月23日 横浜
- 植田 健,深沢 賢,小丸 淳,佐塚智和,宮坂杏子,江越賢一,浜野公明,丸岡正幸 前立腺がん内分泌療法におけるバリアンス解析と地域連携クリティカルパスの改訂 第12回医療マネジメント学会 平成22年6月11日 札幌市
《問い合わせ先》
植田 健 (うえだ たけし)
千葉県がんセンター
泌尿器科 部長
〒260-8717 千葉市中央区仁戸名町666-2
電話:043-264-5431(代表)、FAX:043-265-9515
メール: urolccc@yahoo.co.jp
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