腫瘍血液内科
1)診療内容と方針
当科は、血液の悪性腫瘍の中でも、悪性リンパ腫、骨髄腫、白血病を専門としています。急性白血病は臨床検査部と協力し、即日に診断結果をだし速やかに治療に移ることが可能です。
悪性リンパ腫は正確な組織診断の確定に努め、その上で、悪性度、組織型に従い患者に合わせて放射線治療、リツキサン投与、化学療法、末梢血幹細胞移植併用大量化学療法等の治療を行っています。
白血病の治療においては、非血縁者骨髄移植の適用となるケースは移植認定施設に紹介依頼させて頂いております。
骨髄腫においては平成19年より分指標的治療薬(ベルケード)を用いた治療を行っています。
一方、集学的治療の一環としての化学療法や標準的治療が確立していない再発がん、転移がんおよび、難治性の稀少がんに対する治療も各診療科医師と協力して行なっています。いずれも患者さんにとってわかりにくいことがない様、丁寧な説明を行うことを大切にしています。
2)主な対象疾患と治療法
《血液疾患について》
当科の特徴は悪性リンパ腫の症例が非常に多いことで、ほぼ県下全域から年間約100名の患者さんが紹介されてきます。悪性リンパ腫と一口に言っても様々な病型があり、それぞれのタイプごとに症状や治療法・予後が異なっています。そのため、まず大切なことはどのような種類のリンパ腫か診断をつけることであり、当科では臨床病理部や臨床検査部と協力して細胞の免疫染色、フローサイトメトリー、さらに症例によっては遺伝子解析も行って、正確な組織診断の確定に努めています。その上でリンパ腫の悪性度、組織型に従いそれぞれの患者さんに合わせて、放射線療法、リツキサン投与、化学療法、自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法、等の治療を行っています。悪性リンパ腫の中で最も多いタイプのびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の治療指針としては、限局期症例には短期CHOP療法に放射線治療を併用したcombined modality treatment (CMT)を行い、進行期症例にはリツキサン併用CHOP療法(R-CHOP)を行うのが原則ですが、進行期のハイリスク症例に対しては自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を治療早期に組み込んだ治療を行っており、現在は多施設共同臨床試験に参加しています。骨髄腫は高齢の患者さんが多数を占め、強力な化学療法が適応とならない場合が多いので、良好なQOLを保った長期生存が目標となりますが、比較的若年の患者さんには、長期の無治療無増悪期間を得ることを目標に自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法も行っています。平成13年度から、ろほう性リンパ腫と骨髄腫の患者さんに対して、移植前処置に用いる抗がん剤の量を減らした“ミニ”移植の臨床試験を開始しており、今後高齢の患者さんや合併症を持った患者さんにおいても移植治療の適応症例が増えることが予想されます。急性白血病の患者数はそれほど多くありませんが、やはりフローサイトメトリーを用いて早期の病型診断を行い、骨髄性、リンパ性のそれぞれの症例に対して日本および世界での標準化学療法をup to dateで行うように努めています。また、若年者でHLAの一致する御兄弟(姉妹)がいらっしゃる場合には積極的に同種造血細胞移植療法を施行しています。さらに、平成16年度から臍帯血移植認定施設となっており、今後、適応について十分に検討した上で必要と判断された症例に対しては臍帯血移植療法を施行していく方針です。
《固形がんの化学療法について》
集学的治療の一環としての化学療法(乳がんに対する術後補助化学療法、精巣がんに対する寛解導入化学療法など)および標準的治療が確立していない再発がん・転移がん(再発乳がんや原発不明がんなど)や難治性の希少がん(メラノーマ、軟部肉腫、脳腫瘍など)に対する化学療法を外科系の診療科と協力して行っています。化学療法は血液腫瘍には有効で固形がんには効きにくいとされてきました。しかし最近イリノテカン、ドセタキセル、パクリタキセル、ジェムシタビンなどの新しい抗がん剤やハーセプチンなどの分子標的治療薬が使えるようになりそれらを適切に組み合わせ使用することにより固形がんにも新たな展望が開けてきました。現在、日常診療として標準療法を適切に行うことおよび従来の治療成績をより改善させるような新しい治療の開発(臨床試験)に取り組んでいます。化学療法高感受性の胚細胞腫瘍(精巣腫瘍、脳胚芽腫)に対しては、泌尿器科や脳外科と協力して、ハイリスク症例や再発症例を対象として自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を組み込んだ治療を行っています。固形がんに対する化学療法のニーズは最近急速に増加しておりますが、副作用を軽減する工夫により多くの患者さんが外来に通院しながら化学療法を受けています。それと並行して、紹介元の病院や患者さんの住まいの近くの病院や診療所などとの病病・病診連携を大切にして化学療法を進めていきたいと考えています。
主な治療のご案内
| 治療項目 | 入院/外来 | ご案内 |
|---|---|---|
| 悪性リンパ腫 | 入院/外来 | フローサイトメトリー等による組織診断を迅速に行い、組織型・悪性度に合わせて治療方法を選択しております。最も多いDLBCLの進行期症例についてはリツキサン併用CHOP療法を短期入院にて行っております。 |
| 骨髄腫 | 入院/外来 | 若年層(65歳未満)の患者さんに対しては、長期の無治療無増悪期間を得る事を目標に、自家末梢血幹細胞移植併用化学療法を施行しております。また、平成19年よりベルケードによる分子標的治療を行っています。 |
| 自家末梢血幹細胞移植 | 入院 | 悪性リンパ腫・骨髄腫等の血液がんのみならず、精巣がん・脳胚芽腫などのハイリスク及び再発症例に対しても各診療科医師と協力し、大量化学療法を併用しながら積極的に治療に取り組んでおります。 |
| 固形がんの化学療法 | 入院/外来 | 乳がん(術後補助化学療法)、精巣がん(寛解導入化学療法)などの治療をはじめ、標準治療確立していない再発・転移がん・難治性の希少がんへの化学療法に対して、各診療科医師と共同で治療にあたっております。副作用対策を工夫し、多くの患者さんが通院治療を受けております。 |
3)構成メンバー
部長
輸血療法科部長(兼)
S49年 新潟大学医学部卒
専門は血液内科、輸血、感染症
- 日本血液学会 血液専門医・血液指導医
- 日本輸血学会 輸血認定医
- 日本感染症学会 感染症専門医・指導医
- 日本内科学会 内科認定医・指導医
外来化学療法科部長(兼)
H3年 岐阜大学医学部卒
専門は造血器腫瘍 がん化学療法全般
- 日本内科学会 認定内科医・指導医
- 日本血液学会 血液専門医・指導医
- 日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医
医長
H5年 千葉大学医学部卒
- 日本内科学会 認定内科医・専門医
- 日本血液学会 専門医
医長
H10年 千葉大学医学部卒
- 日本内科学会 認定内科医
- 日本血液学会 血液専門医
医員
H15年 順天堂大学医学部卒
- 日本内科学会 認定内科医
修練医
H16年 聖マリアンナ医科大学卒
4)外来診療担当表
5)主な業績および資格
1. Sakai C, Matsubayashi K, Saotome T, Ishii A, Kumagai K : Therapy-related myelodysplastic syndrome with 1q due to der(1;7) and megakaryoblastic proliferation developing during complete remission of therapy-related acute myeloid leukemia with t(8;21). Internal medicine 43(7): 582-586, 2004
2. Ise M, Takenouchi T, Sakai C : Splenic lymphangiomatosis with inflammatory signs and elevated serum interleukin-6: A case report. J Clin Exp Hematopathol 44(2): 77-80, 2004
3. 熊谷匡也、高木敏之:Hodgkin病の治療戦略-確立された標準治療とさらなる改善への試み. 医学のあゆみ 212(5): 415-420, 2005
4. 酒井 力:悪性リンパ腫の歴史.血液の辞典(平井、押見、坂田編:朝倉書店)p24-26, 2004
5. 酒井 力:頭頸部限局悪性リンパ腫の治療の実際-化学療法+放射線療法(Combined Modality)の有効性の確認と治療失敗例の検討-.頭頸部癌 30(3): 352-357, 2004
6. 熊谷匡也、高木敏之:抗腫瘍薬の非血液毒性とその対策.白血病・リンパ腫・骨髄腫-今日の 診断と治療 第3版(押見編:中外医学社)p330-336, 2004
7. 石井昭広、高木敏之:多発性骨髄腫.EBM内科処方指針(黒川、寺本編:中外医学社)p722-729, 2004
8. 村上博和、石井昭広、高木敏之 他:日本骨髄腫研究会参加施設におけるサリドマイド治療の 現状と成績.臨床血液45(6): 468-472, 2004
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