千葉県がんセンター
私たちは一人でも多くの千葉県民に質の高いがん治療を提供します。

千葉日報「がん征圧月間・がん治療最前線」に掲載されました。
平成20年9月6日~9月23日(全15回)

ナンバー1 患者の立場でサポートチーム 緩和医療科医長 坂下 美彦

 がんの患者さんには「痛み」や「息苦しさ」などの体の症状、あるいは「気分が沈んでしまう」などのこころの症状を伴うことがあります。このような症状の緩和を行い、患者さんの日々の生活の質を出来るだけ良いものにしようとするのが緩和ケアです。
 以前は緩和ケアというと終末期を連想されがちでした。しかし、痛みなどの症状は抗がん剤の治療中の患者さんにも起きることがあり、それが生活の質を悪くしたり、治療の妨げになってしまうことがあります。ですから、現在、緩和ケアは病気の状態にかかわらず、すべてのがん患者さんに必要だと考えられています。
 基本的な緩和ケアは、まずは担当医師や病棟のスタッフが行います。しかし、コントロールが難しい症状の患者さんや、複雑な問題を抱えた患者さんの場合にはがんサポートチームが関わります。がんサポートチームは医師・精神科医・看護師・臨床心理士・薬剤師・栄養士・リハビリ担当者からなる緩和ケアを専門とする多職種のチームです。毎週行われるチームミーティングでは、患者さんの問題点をいろいろな立場から議論します。そして良いと考えられる対策を担当医や病棟スタッフに伝えたり、必要に応じてメンバーが患者さんのところへ直接伺います。
 がんサポートチームではこのような緩和ケアコンサルテーション以外に、病院スタッフに対する緩和ケアの勉強会なども行っています。

ナンバー2 通院で行うがん化学療法 外来化学療法科部長 辻村 秀樹

 「抗がん剤による化学療法を行いましょう。」患者さんに向かってこのようにお話しすると、多くの方はたいへん嫌そうな顔をされます。それは、副作用がつらいという強いイメージをお持ちだからです。確かに、多くの抗がん剤には副作用があります。しかし、今はそれを我慢する時代では決してありません。
 当センターには通院化学療法室という専門施設があり、1日平均55人、多い時には70人以上の患者さんが抗がん剤治療を受けておられます。これは全国トップクラスの件数ですが、裏を返せば同じ数だけの副作用があることになります。治療効果を損ねずに副作用を減らすためにどうしたらよいのか?これが私たちスタッフ最大のテーマであり、職種を超えたチーム全体で対策に取り組んでいます。まず、看護師が患者さんとの対話の中から副作用の頻度や程度を拾い上げます。薬剤師は問題を起こした薬剤の情報を集めます。これらをもとに専門医を中心とした化学療法の専門委員会で対策を練ります。ここで決まった対応法は、電子カルテを通じて即座に治療に生かされます。この結果、嘔吐、アレルギー反応、血管炎や手足のしびれなど、多岐にわたる副作用の改善に成功しています。そして、ほとんどの患者さんはご自宅で普段通りの日常生活を送りながら、あるいは仕事を続けながら治療を続けておられます。今後も「心と体にやさしい化学療法」の実現を目指してがんばっていきます。

ナンバー3 迅速病理診断で患者負担軽減 臨床病理部医長 荒木 章伸

 近年の癌に対する手術治療は癌をしっかり取り除くことに加えて患者さんへの手術の影響がなるべく小さくなるよう配慮されています。ここで紹介する迅速病理診断は手術で取り除く範囲をなるべく小さくすることを目的に行われる機会が増えています。
 これは手術の最中にリンパ節や胃、肺の一部などを専門家である病理医が顕微鏡で調べてそこに癌細胞があるかどうかを判定するものです。例えば乳癌の手術の時に「センチネルリンパ節」という癌の近くのリンパ節に転移があるかどうかを調べて転移があれば脇の下のリンパ節をとりますが、もしなければリンパ節はとらないという選択ができます。脇の下のリンパ節をとると腕がむくんだりするため、とらない方が患者さんには優しい治療となるのです。また肺に腫瘍があるけれども癌なのか良性のものか手術の前の検査では判らないことがあります。それが癌であれば肺をかなり大きくとらなくてはなりませんが、もし良性であれば腫瘍の部分だけを小さくとることで手術は終わります。ですから手術中に腫瘍を顕微鏡で調べることで患者さんへの影響を最小にすることができるのです。このように迅速病理診断を行うことで患者さんへの肉体的負担を軽くできる可能性が高まりますので手術を受けるときにはその病院で病理医による迅速病理診断が行われているかどうかを確認すると良いかもしれません。

ナンバー4 胃がんの内視鏡治療 消化器内科医長 原 太郎

 胃がんは肺がんに次いで死亡者数の多いがんですが、診断技術の進歩や検診により早期に発見される例が増えており、「治るがん」の代表ともいえます。胃がんは胃壁の一番内側の粘膜層から発生し、時間とともに外側へと進行していきます。初期の段階の粘膜層、粘膜下層までのものを早期胃がん、それより深くなったものを進行胃がんと呼びます。
 以前は早期胃がんであっても開腹手術(胃切除)が行われていました。しかし最近は内視鏡でがんを切除する治療が年々増加しています。早期胃がんに対する内視鏡治療は胃の機能を温存した侵襲の少ない治療法で、外科治療と同等の治療成績があげられることから現在広く行われています。また外科手術に比べ後遺症がほとんどなく、術後のQOL(生活の質)が格段に良好です。
 内視鏡治療法として、以前は病変部にループ状にワイヤーをかけ、高周波電流を流して焼き切る内視鏡的粘膜切除:EMRが主流でしたが、この方法は切除面積に制限があり、がんが分割切除されることも多いため、再発が多いなどの問題点がありました。しかし最近は新しい内視鏡治療法-(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)が開発され普及してきました。ESDでは電気メスを用いてがん周囲を切開しさらに病変部の剥離を行うため、大きな病変であっても病変を一括切除することが可能です。また切除された標本で正確にがんの広がりを評価することができるため、再発が極めて低い治療法です。ただしESDは転移が疑われる場合は適応外で、対象はリンパ節転移の可能性がほとんどない早期がんに限られます。ESDはメリットが大きい治療法ですが、高い技術が要求されます。術前の正確な広がりの診断や深達度診断が重要です。また出血や穿孔のリスクもあり、専門医による治療が望ましいといえます。

ナンバー5 患者相談支援センター 副看護師長 米須 貴子

 千葉県がんセンターには1階に患者相談支援センターがあります。主に、がん医療に関する相談や、情報提供を行っています。
 看護師、MSW(医療福祉相談員)、臨床心理士などの専門スタッフが患者さんやご家族のサポートを行っています。
 看護師は、治療に伴う症状や副作用への対処法、医療者とのコミュニケーションにおける悩み、セカンドオピニオンなどの相談をお受けします。MSWは、自宅での介護や、転院など療養場所に関する情報提供や、医療費の相談を、臨床心理士は、がんのことを考えると夜も眠れない、家族ががんにかかり心配でたまらないなど心理的な悩みをお聞きし、相談に乗っています。
 平成19年度の相談件数は延べ8,630件に上り、外来通院中や入院中の患者さん、ご家族のほか、県外の方からの相談もお受けしています。
 また、当センターには、ピアカウンセラー(がん体験を持つ相談員)が専用のスペース(ほっとステーション)で、誰に話したらよいか迷っている、気持ちを分かって欲しいなどの相談をピア(仲間)としてお受けしています。さらに、音楽療法士による心と体のリラクゼーションや、患者用図書館「にとな文庫」を、癒しの場として開設しており、大変好評を得ています。
 また、県民の皆様を対象に講演会やセミナーも企画し開催しています。
 スタッフ全員、患者さんやご家族が安心してがん医療が受けられるように、一つ一つの相談内容にじっくり耳を傾け、一緒に考え問題を解決するお手伝いをします。
 料金は無料で予約も必要ありません。

ナンバー6 「思いを聴く」臨床心理士 臨床心理士 杉村 舞

 がんを告げられて眠れない夜。頭の中を巡る思い。戸惑いや緊張を抱えた通院。落ち込みと不安の中での入院。治療にまつわる心配。そして仕事のこと、家族のこと、これからのことを考えたときの、さまざまな思い。
 患者さんやご家族は、がんと向き合う毎日の中で、このように持ちきれないほどの思いとともに過ごしています。その思いを、その人がなんとか抱えられるように、そして少しでも和らぐようにと思いながら、臨床心理士がお話しをうかがっています。
 臨床心理士とは、財団法人日本臨床心理士資格認定協会が定めた資格を持つ、心の支援の専門家です。心も体も全て含めたその人の「いのち」への医療を提供できるよう、病院スタッフの一員として勤務しています。
 「思いを聴く」ということは、慰めたり励ましたりすることではありません。特別な助言もありません。どんな気持ちも、その人に生じている気持ちとして大切に扱います。対話を通じ、時には心を休め、時には人生の一部としての病を考え、そしてその人が持つ力を温めていけるように、耳を傾け続けます。
 厳しい毎日の中でも、支えや希望を思い出し、静かに落ち着きを取り戻す姿や、ふと心が緩んだささやかな笑顔に出会う瞬間があります。患者さんにも、ご家族にも、そんな時間が少しでも早く、そして少しでも多く訪れるようにと思いながら、かけがえのない人生を生ききる「いのち」の力を支えます。

ナンバー7 前立腺がん治療法の選択肢 泌尿器科部長 植田 健

 前立腺がんは欧米の男性に多いがんですが、日本でも生活の欧米化、人口の高齢化、前立腺特異抗原(PSA)検診の普及により増加しています。前立腺がんを疑った場合、超音波で前立腺を観察し針生検で少量の組織を取って確定診断を行います。
 前立腺がんの診断後の病気の広がり(病期)はCT、MRI、骨スキャンなどの画像検査が必要です。前立腺がんの治療は、がん組織の悪性の程度、がんの進行度(病期)、患者さんの背景やご希望を踏まえて治療法を選択します。治癒を目指す治療法として手術療法や放射線治療がありますが、転移がない前立腺がんが条件です。
 手術療法は、前立腺全摘除術、腹腔鏡手術のほか、超音波のエネルギーでがんを焼いて死滅させる高密度焦点式超音波療法(HIFU、ハイフ治療)がありますが、10年以上の生存期間が見込める限局性のがんが適応となります。
 放射線療法は、小線源療法、従来の照射法に加えて、がんに放射線を集中的にコントロールして照射する強度変調放射線療法(IMRT)があります。限局しがんに対するHIFU治療や小線源療法は体への負担も少なく、入院期間が短く、良好な治療効果が得られています。IMRTは3次元原体照射に比べ副作用としての膀胱・直腸障害が少なく、治療効果が高い治療法です。
 内分泌療法は男性ホルモンを抑制し、前立腺がんの進行を抑える治療です。早期がんから進行がんすべての病期に対して治療可能です。限局がんは治療法の選択肢が多くそれぞれの治療に優れた点があることから、専門医とよく相談の上治療法の選択を行ないましょう。

ナンバー8 婦人科がん機能温存治療 婦人科部長 田中 尚武

 近年、種々のがんに対する外科手術は、広範囲にがんを切り取る拡大手術から、身体に負担の少ない低侵襲手術あるいは機能温存手術に向かっていることは否めません。婦人科がんに関しても、主に子宮・卵巣を原発とする初期がんに対し、子宮、卵巣機能を温存する治療法の有効性が各々のがんの治療ガイドラインに記載されています。
 子宮頚部の上皮内がんに対する、妊娠機能を残すことを目的とした円錐切除治療は日本の婦人科がん治療施設の約70%で行われている治療法であり、最適な治療法として子宮頸癌治療ガイドラインで推奨されています。子宮体がんの機能温存治療としては、早期子宮内膜がんに用いられる黄体ホルモンを使用した妊娠機能の温存治療の有効性が報告されています。しかしこの機能温存治療法は子宮体癌治療ガイドラインにおいては必ずしも推奨されてはおりません。治療後に再発する場合も多く、その治療を行うかどうかの判断には厳重な注意が必要です。
 若年者の悪性卵巣胚細胞腫瘍に対しては、早期はもちろん、進行していても抗がん剤治療の効果が期待できるため、手術治療では積極的に子宮、卵巣を温存することが可能であると卵巣がん治療ガイドラインに記載されています。これら妊娠機能の温存治療の方針を決定する場合には、患者本人とご家族に対する十分なインフォームドコンセント(説明と同意)が必要であることはいうまでもありません。

ナンバー9 機能温存の直腸がん手術 臨床検査部長 消化器外科医師 滝口 伸浩

表:直腸がんにおける肛門温存手術数の推移  がんの手術では、一般的に「根治性」と「機能温存」のバランスを考えながら、術式の選択が行われます。直腸の位置が、男性では泌尿器、女性では膣、子宮に接しているため、直腸がん手術においては、術後の排便機能、性機能(射精、勃起など)や排尿機能が障害されることが大きな問題となります。
 当科では、腫瘍の部位、進行度および年齢などを十分考慮した上で、できるだけ機能温存手術を選択するようにしています。また、根治性を高めるために術前に放射線の照射により腫瘍を縮小させた上での機能温存手術も行っております。直腸がんの手術は、機械で腸管を縫い合わせる機械吻合の発達とともに肛門温存手術が進歩してきましたが、近年では、病理診断技術や手術手技の進歩により、かなり肛門に近いがんでも内肛門括約筋を合併切除することで、根治性を確保しながら肛門温存手術が可能となっています。しかし、肛門に近い腫瘍ほど、また術前照射などを施行した症例ほど、温存した肛門機能は低下することが多いのも事実です。
 一方、性機能、排尿機能の確保に関しては、直腸周囲の自律神経を温存することが大切です。積極的に自律神経温存手術を施行し、性機能、排尿機能の確保に努めています。
 術後の肛門機能、性機能、排尿機能については、個人差の出る問題であり、良好なQOL(生活の質)を得るためには、患者さん自身が、手術について十分理解納得し、治療を受けることが重要です。
 表に、当院での直腸がん手術における肛門温存手術の年度別推移を示しました。肛門温存手術が増加していることがわかります。

ナンバー10 腹腔鏡下の大腸がん手術 消化器外科主任医長 早田 浩明

 大腸がんの治療では手術による切除が非常に重要です。従来の開腹手術では手術創(傷)は15cm以上必要でしたが、最近では腹腔鏡を使用して6cm以下の手術創で可能になってきました。
 腹腔鏡手術は本来つぶれている腹腔に二酸化炭素ガスを送って空間を作り出し、この空間に内視鏡と細長い手術器械を入れて手術を行います。大腸がん手術では切除後に腸管をつなぐ必要がありますが、そのためには非常にデリケートな操作が要求されますので、たいていは6cmの手術創から腸管を体外に引き出して行います。腹腔鏡手術は従来の開腹術に比べ手術創が小さいことから傷が目立ちにくくまた、術後の痛みが少なく入院期間も短いため社会復帰も早い傾向にあります。腹腔鏡下大腸切除は2000年より早期結腸がんから保険適応され、低侵襲手術として広く行われるようになり、現在では進行がんでも保険適応にされています。
 年々腹腔鏡下大腸切除例が増加していますが、大腸がんの位置や進行度により腹腔鏡下手術の難しさが異なりますので必ずしも腹腔鏡での手術が良いとは言えません。骨盤の奥にある直腸は周りを骨や内蔵で囲まれているため、直腸がん手術は腹腔鏡では難しいとされていました。しかし内視鏡は狭い空間にも入り込むことができ拡大して見る事ができますので、最近では腹腔鏡での直腸がん手術も多くなってきました。内視鏡と画像を映すモニターの高性能化、そして手術器械や技術の進歩により広く行われる手術になってきております。

ナンバー11 肝胆膵がん術前検査 消化器外科部長 山本 宏

 肝臓、胆道、膵臓はそれぞれが近接して位置し、その中あるいは近くを重要な血管が複雑に走行するという解剖学的な特徴を持っているので、そこに発生するがんはとなりの臓器や重要な血管を容易に巻き込んでしまいます。そのような特徴からがんの状態の把握のためには複数の肉体的にも精神的にもつらい検査を患者さんに強いる状況が続いてまいりました。血管の状況を知るためには動脈に管を挿入して行う血管造影検査、肝臓に針を刺して行う胆管造影検査、内視鏡を十二指腸まで挿入し、そこからさらに膵管に管を入れて行う膵管造影検査などが肝胆膵がんの診断、治療設計には必須でした。
 しかし、最近のCT機器の進歩に伴い、静脈から造影剤を注入して行うCTだけで肝胆膵がんに関する多くの情報を得ることが可能となりました。以前からCT検査では体を輪切りにした画像が得られ、臓器を白黒の濃淡で描出できるという特徴がありましたが、コンピューター処理の進歩によって体の正面や側面からみた画像として表現することができるようになりました(図)。同時に複数の臓器や血管を描出することができるため、がんと血管や他臓器との関係を、様々な視点からの画像化することが可能になったのです。これにより外来でのCT検査だけで治療方針を決めることができ、つらい検査を省くことができるばかりでなく治療前の入院期間も短縮することができるようになりました。

ナンバー12 高強度収束超音波治療(HIFU) センター長 竜 崇正

 虫眼鏡で太陽光を一手に集中させるように、エネルギーの高い超音波を体外から一点に集中させて、体にキズをつけずに「がん」を治療する治療がHIFU(ハイフ)です。この装置が千葉県がんセンターに導入されました。超音波により局所の温度を80-100度に上昇させて熱凝固と同時にキャビテーションという物理的作用によりがん細胞を壊します。まだ臨床試験の段階ですが、肝がん、乳がん、子宮筋腫、前立腺がんの治療を行なっています、近日中に骨転移に対しても治療を行なってく予定です。肝がんは大きさ3cmで3個以内もしくは5cmで1個の肝機能の良い患者さんが対象です。乳がんでは大きさ2cm以内で皮膚から1cm以上離れているもの、子宮筋腫は症状があり、大きさ10cm以内2個以内で、筋層もしくはしょう膜下のものが対象です。前立腺がんはPSAが1ミリリットル中15ナノグラム以下で前立腺体積が40ミリリットル以下、内分泌療法が4-6月施行ものです。近年、乳がんが急増し、女性の主な死亡原因として注目されていますが、早期発見した乳がんは体にキズがつかずに治す事ができますので、女性の死亡率を減らせるものとして期待されています。治療時間は2-3時間で、治療後2時間ほど安静にしていただき、問題なければ歩行も食事も可能です。現在は1泊していただいていますが、日帰りでの治療も可能になる予定です。

ナンバー13 脳腫瘍の鍵穴手術 脳神経外科部長 井内 俊彦

 部屋の中に紛れ込んだ危険物を、ドアを開けることなく、大切な家具や書類を傷つけることもなく、小さな鍵穴から覗いて取り除く…。こんなSFの様な光景が、脳腫瘍の手術現場では現実化されようとしています。千葉県がんセンターでは、患者さんの負担の少ない脳腫瘍手術法の開発を行っています。最近では、10cm近い大きな腫瘍も鍵穴のような小さな開頭で安全かつ確実に摘出できるようになりました。この様な手術法を鍵穴手術と呼んでいますが、これを可能にしたのが、ナビゲーションシステムと特殊なMRIです。
 ナビゲーションシステムは、コンピュータの目で腫瘍の位置を正確に把握し術者に教えてくれるシステムです。これを用いることにより、腫瘍を取り除ける最小の開頭範囲、腫瘍への最短経路の決定が可能となりました。しかし、最短の経路が、最善の経路とは限りません。脳はあらゆる機能の中枢であり、脳を切開して腫瘍を摘出する脳腫瘍手術は、常に機能損傷の危険性をはらんでいます。特に大切な運動・言語機能を守るため、特殊なMRIを術前に施行することで、運動中枢・言語中枢や、そこから発信される命令の通り路を正確に把握することができるようになりました。この情報をナビゲーションシステムに組み込むことで、機能を損なわずに腫瘍を取り除くための最善の経路の決定も可能となっています。この様に科学の力を結集する事で、安全で負担の少ない手術が可能となっています。

ナンバー14 ラジオ波による乳がん治療 乳腺外科部長 山本 尚人

 乳がんの手術療法は、現在、乳房切除術と乳房温存術に大きく二つに分類されます。乳房切除術は、乳首を含め乳腺全体を摘出する方法で主にがんの大きさが3cm以上の大きな腫瘍に対して行われています。それに対して乳房温存術は、概ね3cm以下の小さな腫瘍にたいして腫瘍を中心に少しだけ広めに正常乳腺組織を含めて切除する方法です。当センターでも1991年より乳房温存療法を開始し、現在までに1,000名以上に行い良好な治療成績が得られています。しかし、乳房温存術では乳房に傷が残り、場合によっては乳房に強い変形を生じるため美容面では必ずしも十分とは言えませんでした。
 そこで、当センターでは肝腫瘍の治療で保険適応になっているラジオ波熱凝固療法(RFA)を2cm以下の早期乳がんに対して臨床試験を行っています。RFAは、腫瘍を摘出せずに電磁波の一種であるラジオ波で腫瘍を80℃以上で焼いてしまう方法です。先端付近からラジオ波をだす穿刺針を腫瘍中心部に刺すことが出来ればそれ以外の特別な技術は必要ありません。治療時間は10~15分程度ですが痛みを伴うため全身麻酔下で行います。5年以上の長期治療成績や安全性がまだ十分確認されていない治療法ですが腫瘍を摘出しないので美容的にはかなり優れた方法です。将来RFAが乳がん治療でも保険適応になることを目指しています。

ナンバー15 県がん診療連携拠点病院 医療局長 木村 秀樹


がん診療拠点病院及び
高度先進医療機関PDF/157KB)

 平成19年4月のがん対策基本法の施行に伴って、がん治療の均てん化、標準化を目標にがん診療連携拠点病院機能強化事業が開始されました。これには1)がん医療従事者研修事業、2)診療連携病院ネットワーク事業 3)都道府県がん診療連携協議会 4)院内がん登録事業 5)がん相談支援事業 6)普及啓発、情報提供などが義務づけられています。
 千葉県がんセンターは都道府県がん診療連携拠点病院に指定されました。このほか国保君津中央病院、千葉労災病院、亀田総合病院、千葉大学附属病院、国立千葉医療センター、国保旭中央病院、松戸市立病院、慈恵医大付属柏病院、順天堂浦安病院、成田赤十字病院、船橋医療センター、東京歯科大市川総合病院が地域がん診療連携拠点病院に指定されました。千葉県内ではこれらの13病院が中心となりがん診療の均てん化、標準化、レベルアップの原動力として活動することになりました。具体的にはこれらの拠点病院でがんに対する診断、治療に関する情報交換を密に行い、緩和医療、相談支援事業の整備を行っています。
 また、患者さんのためのパンフレットの配布や、がんの知識の普及啓発にも力を入れています。さらに県内のがんの統計をとり、地域の特性や治療法の違いなどから、県内居住の誰でも質の高いがん医療を安心して受けられるよう目指します。また、共同で研究を行ったり、地域医療にも力をいれ、診療所、開業医、看護ステーションなどとも連携を図りながら、在宅治療、在宅看護が円滑に進むように活動を始めています。

本文ここまで。以下ナビゲーション

千葉県がんセンター(一般向けメニュートップ) > メディア掲載 > 千葉日報「がん征圧月間・がん治療最前線」に掲載されました。平成20年9月6日~9月23日(全15回)

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