消化器外科/消化器内科のご案内
消化器がんは増えており 全がんの半分を占めています
食道から始まって、胃、十二指腸、小腸(空腸、回腸)、大腸(結腸、直腸)にいたる食物の通り道である消化管と 消化吸収や代謝にとって重要な肝臓や膵臓、胆汁の通り道である胆道(胆管、胆嚢)の病気を取り扱っています。
主な病気は、食道がん、胃がん、大腸がん(結腸がん、直腸がん)、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膵臓がんなどの日本人に多くみられる「消化器がん」です。この他、今は悪性度は低くとも将来悪性度が増す恐れのあるポリープなどの良性/悪性(low grade malignancy)の腫瘍を対象に診療を行っています。
悪性の腫瘍に対しては、主として手術で切り取る「切除術」で治療しますが、放射線治療や抗がん剤による治療、または両者を手術の前や後に組み合わせて行う併用療法も増えてきました。相手の正体を良く見極めて、最適・最善の治療を、患者さんと共に選択するようにしています。
また、鏡視下手術などの低侵襲手術やラジオ波治療や内視鏡粘膜切除などの低侵襲治療法にも積極的に取り組んでいます。
もちろん、切り取られたり、失った機能を再建することにも重点を置いており、手術後の生活の質(Quality of Life, QOL)を向上できるよう努めています。
食道がん
それぞれにあった治療法,自己選択による治療をめざします
食道がんの約8割は男性の愛飲家・愛煙家ですが、喫煙、飲酒の全くない女性にも発生することがあります。日本の食道がんは食道の粘膜から発生する扁平上皮がんがほとんどです。しかし、最近食生活の欧米化、肥満の傾向から、欧米に多い逆流性食道炎を原因とする腺がんもまれではなくなってきました。
食道がんは、以前は治療成績が悪く、予後の悪い病気でしたが、最近では早期発見と治療方法の向上により、完全治癒のケースが格段に増えています。
当センターでは、どんな食道がんの患者さんにも対応できるように、様々な治療法を取り入れています。
浅い小さな早期がんの場合はまず内視鏡による切除を検討します。この治療法がいちばん簡単で侵襲(身体に対する負担)が小さいため、全身状態の悪い患者さんにも行うことができ、治療前と全く同じ生活が送れます。
浅くても広い場合、または、あちこちにたくさんある場合は、内視鏡治療では取り残してしまう恐れが高いので、お腹を開くだけの食道切除(食道抜去術)による侵襲の小さい手術をします。
ある程度の深さがあると診断された場合は(粘膜下まで)、右側の胸を開いて食道切除を行います。現状では、右の胸とおなかを切開して、食道と胃の一部を切除して、胃を管状にして食道に吻合する方法を基本とする手術が、がんの治療としては確実性が最も高い方法です。
さらにがんの深く、厚みがある場合、またはリンパ節にすでに転移ある場合は、手術だけでは微細な病巣を取り残したり、手術操作によりがん細胞を散らす恐れがありますので、手術の前に抗がん剤治療を行って、それを防止し、再発を少なくしようと努めています。また、局所のがんが大きくて、大動脈や気管・気管支など となりの臓器に浸潤している(咬んでいること)ようなときには、抗がん剤とともに放射線療法をおこなう化学放射線療法を行って、がんを小さくしてから手術を行うこともあります。
抗がん剤と放射線による化学放射線療法は、食道がんには極めて効果が高い治療法です。この治療だけで、手術をしなくてもがんが完全に治ってしまうケースも多くなってきています。大きな手術を受けなくてすみますので、患者さんにとっては大変ありがたいことです。食生活もほぼ健康時に戻ることが期待できます。ただ、手術と比べると完全治癒の確実性はやや落ちること、治療前にどの程度の効果を示すかの予測を立てることが不可能で、この治療を終わったあとにがんが残ったり、再発した場合には治療が難しいことが問題としてあげられます。また、放射線による肺や心臓の問題が長く残る場合があります。
つまり、進行性食道がんでは完全治癒を目的とした治療には、手術と化学放射線療法があり、いずれかを選択できるということが言えます。それぞれメリットとデメリットを考え、ご自分の生活スタイルなどを検討して、患者さんご本人の考え方で、治療法を選択されてよいと考えています。
全身状態が悪く、手術が危険と考えられるか、または、手術によってがんが完全に切除しきれない場合には、手術をせずに、化学放射線療法、放射線療法、バイパス手術、内視鏡による食道内チューブ留置術などそれぞれに応じた治療法を選択します。
平成20年に新しく診断された食道がん119人の患者さんに上記のような治療を行いました。うち切除例は46人(内視鏡切除6人を含む)でした。治療成績は、最近10年間の切除例の5年生存率は約50%です。
胃がん
低侵襲治療、縮小手術が増えています
胃がんは、肺がんに次いで高い死亡率となっていますが、早期発見により胃がんによる死亡数は減少傾向にあります。胃がんの病期(ステージ)は、深達度、リンパ節転移、他臓器転移の程度により決定されます。リンパ節転移のない粘膜内がんから、高度のリンパ節転移や多臓器への浸潤や転移のある胃がんまであり、正確な診断のもと、進行程度に応じた適切な治療を選択することが大切です。
1)外科(手術)療法
胃がんの基本治療で、最も有効で確実な治療手段となっています。外科療法は、病巣を含めた胃の切除とともに胃周囲のリンパ節の切除(リンパ節郭清)、食物の通り道の再建からなっています。この胃の切除範囲やリンパ節の郭清程度は、病変の占拠部位と広がり、進行度により決定されます。その中で比較的早期の胃がんでは低侵襲手術として、腹腔鏡補助による胃切除術を採用しており、増加傾向にあります(図1)。また、術後のQOL(生活の質)向上のため、食物貯留能確保や逆流防止を目的に、幽門温存やパウチ(小腸により袋を作成)作成等の工夫も行っています。
2)内視鏡治療
リンパ節転移のない粘膜内がんで組織型が分化型の胃がんでは、内視鏡的に粘膜および粘膜下層を切除することにより根治することができます(内視鏡的粘膜下層剥離術;ESD)。近年、手技の向上および機器の開発により、ESDは急速に増加しています。特に当院では、粘膜内がんと考えられる分化型腺がんに対して、腫瘍径によらず一括切除が可能と判断されれば適応としており、積極的な低襲治療を行っております。
3)化学療法
再発や外科療法で切除しきれない場合の治療選択としては、抗がん剤による化学療法が基本となります。手術単独では切除できないような症例では術前に化学療法をすることにより切除率を向上させる可能性があります。手術によって肉眼的にがんがとり切れたときに、再発予防として抗がん剤を投与することを術後補助化学療法といいます。ティーエスワンなどの新規抗がん剤の開発により生存期間の延長が認められ、化学療法による治療も注目されています。
当科では、日本胃がん学会が公表した“胃がん治療ガイドライン”をベースに治療方針を決定していますが、がん専門病院として日常診療レベルの治療法のほか、臨床研究レベルの治療法も積極的に取り入れ、縮小手術や腹腔鏡補助下胃切除術を積極的に導入しています。内視鏡によるESDも分化型の粘膜内がんで一括切除可能であれば適応を拡大しています。また、切除部位に応じた再建の工夫をしており、胃切除後障害の発生の予防に努力しております。積極的に術前抗がん剤投与(術前補助化学療法)も導入し、術後の抗がん剤投与に関しては、全国的な規模での多施設共同研究にも参加し、標準的な日常臨床とともにエビデンス構築のための臨床研究にも携わっております。
当科での実績と治療成績
当院での胃がん手術総数は当院では平成19年度198例、平成20年度212例であり、そのうち腹腔鏡手術は平成19年51例、平成20年55例行っております。他に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は消化器内科との協力のもとに年間60例を超える症例が治療対象となっております。
胃がんの進行度別5年生存率は、最終ステージで
A; 95.1%
B; 89.7%
; 80.3%
A; 57.8%
B; 29.7%
;10.8% です。
図1 腹腔鏡(補助下)による胃がん手術症例数
| 年 | 幽門側 胃切除術 |
幽門保存 胃切除 |
噴門側 胃切除術 |
胃全摘術 | その他 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成15年 | 0件 | 1件 | 0件 | 0件 | 0件 | 1件 |
| 平成16年 | 8件 | 7件 | 1件 | 0件 | 1件 | 17件 |
| 平成17年 | 6件 | 11件 | 0件 | 1件 | 1件 | 19件 |
| 平成18年 | 25件 | 11件 | 3件 | 2件 | 0件 | 41件 |
| 平成19年 | 29件 | 9件 | 5件 | 8件 | 0件 | 51件 |
| 平成20年 | 37件 | 3件 | 3件 | 9件 | 3件 | 55件 |
| 計 | 105件 | 42件 | 12件 | 20件 | 5件 | 184件 |
大腸がん
自然肛門温存術が増えています
大腸がんは欧米においては最も多いがんです。最近、日本でも食生活が欧米化してきたこともあり、増加の傾向にあります。大腸がんの基本的な治療方針は切除(手術)です。当科での大腸がんの手術件数はここ数年間、年間約 120例以上で平成20年は169例の手術を行っています(図2)。

大腸は直腸と結腸とに大別されます。
直腸がんと聞くと、人工肛門を連想される方が多いようですが、治療 技術の向上と集学的治療により、肛門に近いがんの方でも自然肛門温存術式が多くなり、永久人工肛門となられる方は大変少なくなってきております。当科では肛門にかなり近い部位にあるがんには術前放射線化学療法を行い、その後に肛門を温存する術式を行う集学的治療を行っています。術前放射線化学療法のため手術するまでの時間はかかりますが、術後局所吻合部再発の予防には大変有効であり、自然肛門温存できる適応が大きく広がりました。また、自律神経温存術式により、排尿機能、性機能温存も拡充してきており、術後生活の質が低下しなくなり多くの患者さんが安心して生活していただいています。
結腸がんでは、従来の開腹術に比べ痛みの少ない腹腔鏡下大腸切除術も取り入れるなど、 先進的な技術の導入はもちろんのこと、治療の合理性を図り入院日数の削減、負担軽減を実現しています。腹腔鏡下大腸切除は年々手術数が増加し、技術的に難しいとされる直腸手術でも拡張された良好な視野の良点を生かし、適応を広げています(図3)。
術前検査でも、患者さんの負担が少なくなるよう下剤を服用しての検査を少しでも減らすため大腸内視鏡と同時にCTを駆使し、バーチャル内視鏡画像、3D画像を構築して診断しています。
抗がん剤治療をお受けになられる方でも、外来での治療ができる様にスケジュールや投薬方法を工夫しております。
当科での大腸がん根治術後5年無再発生存率はstage0;100%、stage1;97%、stage2;89%、 stage3a;79%、stage3b:56%、stage4;6%です。大腸がんは早期の段階で治療できれば、高い確率で治癒できるがんです。大腸がん検診を受けられることをお勧めします。
肝・胆・膵がん
術前検査の負担を少なくなるように努めています。
肝臓、胆道、膵臓はそれぞれが近接して位置し、その中あるいは近くを重要な血管が複雑に走行するという解剖学的特徴を持っているので、そこに発生するがんは隣の臓器や重要な血管を容易に巻き込んでしまいます。そのような特徴からがんの状態の把握のためには複数の肉体的にも精神的にもつらい検査を患者さんに強いる状況が続いていました。血管の状況を知るためには動脈に管を挿入して行う血管造影検査、肝臓に針を刺して行う胆管造影検査、内視鏡を十二指腸まで挿入し膵管に管を入れて行う膵管造影検査などが肝胆膵がんの診断、治療設計には必須でした。
しかし、最近のCT機器の進歩に伴い、末梢静脈へ造影剤を注入して行うCTだけで肝胆膵がんに関する多くの情報の取得が可能となりました。従来からCT検査では体を輪切りにした像が得られ、臓器を白黒濃淡で描出できる特徴がありましたが、コンピューター処理によって体の正面からあるいは側面からみた像を表現することができるようになりました(図4)。同時に複数の臓器や血管を描出することができるため、がんと血管、他臓器との関係が様々な視点からの画像化が可能になったのです。これにより外来でのCT検査だけで治療方針を決めることができ、つらい検査を省くことができるばかりでなく治療前の入院期間も短縮することができるようになりました。
しかし、解剖学的特徴から 他の部位のがんに比べ、肝、胆、膵がんの切除率は低く、切除できる場合でも、切除方法は患者さんに大きな負担になるようなものになります。したがって、私たちは安全で、がんの治癒を目指せる術式を選択できるように、常に努めています。また、成績向上を図るべく、消化器内科と連携し、手術前後の抗がん剤や放射線療法を組み合わせた療法に積極的に取り組んでいます。
当科の肝細胞がん、大腸がん肝転移切除例の5年生存率はそれぞれ、52%、59%です。胆管がん、膵がんは切除例の5年生存率はそれぞれ28%、16%です(生存率は平成21年3月現在です)。
平成20年1月~平成20年12月の手術症例数
| 食道癌 | 42例 |
|---|---|
| 胃癌 | 204例 |
| 大腸癌 | 184例 |
| 肝胆膵癌 | 110例 |
※うち鏡視下手術 134例
入院期間などの目安
外来での入院予約から手術までは約1ヶ月程度かけて、病変の正確な把握、心臓、肺機能などの全身状態の検査を行った後、手術などの治療を行っていますが、入院待ちの期間を短縮するために能率的なベッド利用や診断体系の確立に努めています。術後入院期間は、数年前に比べ、半分から3分の2に短縮しています。疾患別、手術の軽重、合併症の有無などで一律ではありませんが、一応の目安は以下を御参照ください。
| 食道切除 | 約4週 |
|---|---|
| 胃切除 | 10日~2週 |
| 大腸(結腸,直腸)切除 | 7日~4週 |
| 肝胆膵系の手術 | 7日~3週間 |
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